レターポットに学ぶ!コミュニティを味方につけるマーケティング
こんにちは。(株)トライバルメディアハウスで、日々さまざまなブランドのファンづくりやファンを巻き込むマーケティングの支援をしている田中陸也(@RuuieTanaka)です。
前回の記事では、これからの時代におけるブランドづくりとして「コミュニティ価値の最大化」の重要性をまとめました。
今回は、今まさに「コミュニティ価値」を高めながらブランドづくり(事業づくり)をしている、キンコン西野さんの新サービス「レターポット」を取り上げて、ブランドづくりの具体的な手法を、「コミュニティを味方につける3つのコミュニケーション」として整理してみました!
ちなみにレターポットは、 2017年12月にローンチされてからたったの2~3ヵ月で既に約5万人ユーザーを抱えるサービスで、いわゆる「広告(ペイドメディア)」は一切打たずに、ファンを巻き込みながらブランドを成長させています。
ビジネスにおいても天才の西野さんのやり方からは、本当に学べることが多いですので、ぜひ読んでみてください!
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そもそもレターポットとは?
レターポットとは、1文字(=1レター)を5円で購入し、そのレターを使ってメッセージを贈りあうことができる「文字を通貨」にしたサービスで、誰かに感謝したいときや応援をしたいときに、「価値の乗ったメッセージ」として、自分の気持ちを手軽に贈りあうことができるサービスです。
これにより、「メッセージだけじゃ軽い気がするけど、モノやお金を贈るほどでもない」というような、これまで見過ごされていた感謝や応援の気持ちを贈り合う世界が作れる、本当に素晴らしいサービスだと思います。
イメージがわかない方は、この西野さんのブログ記事や、ユーザーの目黒さんがまとめた図解がわかりやすいので見てみてください。
ただ、正直使ってみないとこのメッセージをもらった時の感覚は理解できないと思います。
まだ使ったことない方は、 今回のブログの感想を以下の僕の【レターポット】宛にいただければ、御礼レターをお返しします !
また、「レター買うのはちょっと・・・」という方は、このブログへの感想やご質問を僕のTwitterアカウント「@RuuieTanaka」をタグ付した上で、「この記事のURL + ご自身のレターポットのURL」をツイートしていただければ、御礼のレターをお贈りします!
ちなみに、レターポットは、今バズワードになりつつある「トークンエコノミー」の文脈でもその設計力がすごいと感じています。ここについてはまた別記事で書きたいと思います。
コミュニティを味方につけ、広告なしでユーザー数約5万人!
冒頭でも述べましたがレターポットは、「広告(ペイドメディア)」を打たずに たった2~3ヵ月で既に5万人近くのユーザーを抱えるサービスに成長しています。
これを実現させているのが、 レターポットの目指す世界観に共感して「応援したい・貢献したい・一緒に創りたい」と思っているファンの集まり(=コミュニティ)の存在です。
西野さんはよく「共犯者を増やす」という話をされますが、まさにこのレターポットは、通常であればブランド側が担ってしまうあらゆるプロセスに、コミュニティを巻き込んでコミュニティと共にブランドを創っています。
その結果として、例えば前述の目黒さんの図解のように、サービスをわかりやすく説明したUGC(User Generated Content:SNS投稿/ブログ記事/動画などのユーザーが制作したコンテンツ)が、どんどん自主的に生まれています。
他にも、動画を作っている人もいれば、
レターポットがサーバーダウンしてしまったときに、復旧のお知らせに使われているイラストもファンが書いたものです。
【レターポット】
— 革命と信用のキンコン西野📪 (@nishinoakihiro) 2018年2月6日
ご迷惑おかけしましたー。
怒らないでねー(*^^*) pic.twitter.com/K4AYJp717m
極め付けには、レターポットでレターを贈ると料金が半額になるキャンペーンを、ファンであるバス会社が自発的に実施していたりします。
letterpotキャンペーン第一弾| 夜行バス予約サイト【バスのる.jp】
これらは本当に本当に「ほんの一部」で、普通ならブランド側がお金を使って作るようなコンテンツを、ファンが自ら生み出してくれているのです。
そしてこのようにファンを味方につけながら、サービスを成長させているのです。
ではこのような状況をどのように西野さんが作りだしたのか。3つのコミュニケーションに分けて具体的にみていきます。
コミュニティを味方につける3つのコミュニケーション
前回の記事で書いたように、ブランドの周りにコミュニティができるには、「商品やサービスがもたらす体験価値(= What)の向上」だけでは難しい時代になっていて、「Whatを提供する社員=Who」や、その「背景にある想い=Why」まで含めて、ユーザーの共感をつくることが必要です。
西野さんまさに、この三位一体を作りながらコミュニティを形成し、
そのコミュニティと共にWhatの価値(レターポットというサービスとしての価値)をより高めていったり、コミュニティが生み出すクチコミやUGCを起点にユーザー数を増やすなど、まさにコミュニティと共にブランドを創っていっています。
このような、コミュニティを味方につける状況を作り出しているのが、今回のテーマの「コミュニティを味方につける3つのコミュニケーション」です。
①高密度コミュニケーション
コミュニケーションは一般的に、個々へのコミュニケーションの質は浅くなるが多くの人にリーチできる「低密度なコミュニケーション」と、質は深いがリーチできる人数が少なくなる「高密度なコミュニケーション」に分けられます。
マス広告やデジタル広告が発展した現代においては、いかに効率よく多くの人にブランドを知り購入してもらうかを追求した効率重視の「低密度コミュニケーション」が重視されていると思います。
しかし、昔の商店街で店員とお客さんが深いコミュニケーションを図りながら店のファンを作っていた時代のように、ファンづくりのためには、一見非効率な「高密度なコミュニケーション」に原点回帰することが重要だと考えています。
(効率重視のコミュニケーションは必要ないという意味ではありません)
まさに西野さんもここに力を入れており、一度に相手にできる人数は限られているけど、着実に少しずつ西野さんの想いやレターポットが描く世界観に共感し応援してくれる「仲間づくり」をしています。
具体的には、
なぜレターポットをつくろうと思ったのかなどのブランドの「Why」や、その想いを実現する世界をレターポットというサービス(=What)でどのように体現していくのかを、西野さん(=Who)が直接説明する機会を、驚くほどたくさん作っています。
例えば様々なイベントへ積極的に登壇していることが挙げられますが、個人的にすごいなと思ったのは、「Facebookのライブ配信」を活用して、合間の時間でも、見てくれる人に対して何度も何度も直接説明をしていることです。
ここでは閲覧者に問いかけてリアルタイムにコメントを拾い上げて丁寧に説明をしています。まさに「高密度なコミュニケーション」です。
また、レターポットを使い始めたばかりの人に、西野さん自らレターを贈ることで、作りたい世界観を自ら体現したりしています。
これも、コミュニケーションする相手は「たった一人」ですが、もらった相手の心は大きく動かされます。 (僕も贈ってもらい感動しました)。
このように、WhyやWhoへの共感を作ることに近道はなく、地道なコミュニケーションが重要です。
特に、大企業はどうしても「効率重視」のコミュニケーションに偏重しがちですが、 急がば回れで、 ファンは一足飛びに増えるわけではないことを認識することが重要だと思います。
ちなみにコミュニティが形成されると、この「高密度なコミュニケーション」をファンが担ってくれるので、ファンがファンを呼ぶ理想的な状態になります。そのためにも、まずは少しずつでも着実に「仲間」を増やしていくのです。
②What共創コミュニケーション
WhyやWhoに共感してくれる仲間ができたら、その中でもより熱狂的なファンを「Whatの共創」に巻き込むことが有用だと思います。
Whatは、その商品やサービスからもたらされるあらゆる「体験」であり、ユーザーのブランド体験そのものを作る非常に重要な部分。この体験価値の向上が、ブランドのファンをより増やしていくことに繋がります。この体験価値の向上に、熱狂的ファンの力を借りるのです。
西野さんの場合は、「西野亮廣エンタメ研究所」というFacebookグループのオンラインサロンが、この共創の場として機能しています。
有料サロン内の情報なので少し抽象的な話になりますが、素晴らしいと思ったのが「ファンの持つ資産を活かした巻き込み方」です。
ファンを巻き込む際によくありがちな間違いが、ブランド側が求める貢献してほしいポイントと、ファンが持つ資産(知識やスキル)がマッチせずに、結果的に価値共創ができないケースです。
この場合、ブランド側がファンの持つ資産を把握しないまま、「何でもいいから自由に貢献してください」とか「資産にマッチしない部分での貢献を要求する」などの間違いがあります。
一方西野さんの場合は、見事にファンの持つ資産を活かした巻き込み方になっています。
例えばレターポットを使い倒しているユーザーだからこそ聞ける「この機能が必要か」「このボタンはどこの位置がいいか」などの問いかけだったり、
レターポットの目指す世界観を認識しているからこそ価値が発揮される「機能の名称アイデアの募集」 「新規ユーザーを増やすための施策出しワークショップ」などの巻き込み方をしています。
これは、「レターポットを使い倒している」や「レターポットが目指す世界観を認識している」といった、ファンの人たちが持つ資産を認識したうえで、その資産を持つからこそ価値が発揮できるような「巻き込み方」を、西野さんがしているということです。
サロン内の各問いかけには、百前後~数百コメントも集まっており、ものすごく活発なやり取りがされています。そしてそのやりとりの結果が、驚くほど速いスピードでどんどんサービス改善や施策に反映されており、Whatの価値を高めることに活かされています。
③UGC創出コミュニケーション
3つ目は、ファンになってくれたユーザーのクチコミやUGC(User Generated Content:SNS投稿/ブログ記事/動画などのユーザーが制作したコンテンツ)を増やすためのコミュニケーションです。
ここがなされているからこそ、高密度なコミュニケーションで作ったファンが、新たなファンを連れてきてくれる好循環が生まれています。
このコミュニケーションで重要なのが、「a.リテラシー向上」と「b.気持ち向上」と「c.行動のきっかけ作り」。 この3つがなければ、なかなかファンが自ら進んで推奨したりコンテンツをつくってくれません。
まず最初に、 クチコミやUGCを作れるようなブランドに関する「a.リテラシー(知識)の向上」です。
ここは前述の、高密度のコミュニケーションにより西野さんが直接語りかけていたり、ファンが生み出したクチコミやUGCが効いていたりします。
これ加えて素晴らしいのは、西野さんがユーザーの状況をしっかりとウォッチしながら、どんどんリテラシーのネタを増やしていっていることです。
例えば、冒頭で紹介したレターポットをわかりやすく図解化したデザイナーの目黒さんの場合、わかりやすく説明してくれたことに対して、他のファンたちからたくさんの感謝の「レター」が集まりました。そしてこの時点で、目黒さんはデザイナー活動をより充実させるためにPCのmacを買うお金をpolcaという個人版のクラウドファンディングサービスで募集しました。
すると、レターを贈ってくれた人たちが、polcaの方でも彼女を支援し、結果10万円以上のお金を集められてmacを購入できたという話があります。
こういうストーリーも、西野さんが見つけてブログやイベント、Live動画で発信していくので、ファンが語れるストーリーとしてのリテラシーがどんどん増えていくのです。
このように、リテラシーを様々なストーリーとしてどんどん増やしているので、語られるネタが尽きません。ファンが語れるネタを増やすことは、すごく参考になる点です。
次に、リテラシーが高まっているだけではいけません。それを誰かに伝えたいとか、伝えることでブランドに貢献したいといった「b.気持ち向上」が必要です。
ここについては、西野さんがレターポットに関するツイートやUGCを全て「ちゃんと見ている」ことを伝えていることや、実際に参考になったクチコミやUGCがあれば、どんどん西野さんのブログやソーシャル、トークで取り上げてくれる点が効いています。
ファンは取り上げられることですごく嬉しい気持ちになるし、ちゃんと見てくれてるんなら自分も貢献したい、貢献するのは無駄じゃないという気持ちになります。
また、レターポットのtwitterアカウントも(これも非公式のファンが運用しているアカウント)一役買っています。#レターポットをつけて投稿したツイートは、ほとんどRTしてくれています。それによって、レターポットについて語りたくなる気持ちが高まります。
最後に重要なのが、実際にクチコミやUGC作成という行動に移してもらうための、「c.行動のキッカケづくり」です。
ここは、けっこう多くのブランドが忘れがちの部分。語れるリテラシーがあり、語りたい気持ちがあったとしても、「語れる空気になっているか」が非常に重要です。
ここで西野さんの場合うまく機能していた事例が、「ハレノヒ事件」を受けて開催された、「リベンジ成人式」です。
かなりTVにも取り上げられていたので、ご存知の方も多いでしょう。このリベンジ成人式の支援をレターポット事業の収益で行い、成人宛へのメッセージをレターポットで募集するなどして、結果的にレターポットの話をファンがしやすいような、世の中の話題づくりをしています。
もちろん、単なる話題づくりには意味がなく、しっかりとブランドが作りたい世界観に沿った方法での話題化(PR)がなされていることが重要です。
すると、「ねえねえ西野さんがリベンジ成人式するの見た?」といったように、自然な形でレターポットが話題にあがりますし、語る側も自信を持って他人にブランドを勧めることができます。
つまりこのようなブランドの世界観を体現したPRは、ファンがファンであることの自信や誇りに繋がりますし、他の人に話す話題のきっかけにもなっているのです。
最後に
レターポットの場合、西野さんのような有名人だからできているのでは?とか、スタートアップだから可能なのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、今回紹介したようなコミュニケーションフェーズは、程度の差はあれど、さまざまな熱狂カンパニー(熱狂者を抱えるブランド)が既に実践しています。
また、僕が今トライバルメディアハウスで支援している大企業のブランドでも、このような考え方を取り入れてファンづくりにチャレンジし始めている会社もあります。
ぜひ、ご自身の会社に当てはめたときに、どんなことができそうかを考えてみるキッカケにしていただけると、すごく嬉しいです!
以上、こちらのブログへの感想やご質問があれば、こちらのFbグループ「評価経済時代の真ブランドづくり」でいただいてもいいですし、レターポットをお持ちの方はレターポットで感想いただけると嬉しいです!
冒頭にもいいましたが、「レター買うのはちょっと・・・」という方は、このブログへの感想やご質問を僕のTwitterアカウント「@RuuieTanaka」をタグ付した上で、「この記事のURL + ご自身のレターポットのURL」をツイートしていただければ、御礼のレターをお贈りしますよ~!
では!
モノからコトの先へ!評価経済時代のブランドづくり「コミュニティドミナントロジック」とは?
「サービスドミナントロジック」とは?
S-Dロジックでよく出てくる例としては、「ナイキ+」もあります。
あれは、ランニングシューズそのもののモノ価値だけでなく、そのシューズを履いてランニングする利用フェーズも含めて、距離やペースの測定や記録化といったサービスでランニング体験の価値を高めた、まさに「S-Dロジック」の考え方です。
しかしこれからの時代、さらにその先に行く必要が出ていると思います。それが今回整理した「コミュニティドミナントロジック(以下C-Dロジック)」です。
「コミュニティドミナントロジック」とは?
C-Dロジックが重要な3つの理由
① 消費者の選択基準が「C-Dロジック」に移行
② 外部環境への適応力が高まる
③ コミュニティが強力なブランド資産に
最後にご報告!
【報告】
— 田中陸也 @ALISアンバサダー (@RuuieTanaka) January 20, 2018
ALIS@ALIS_media の日本アンバサダーに選んでいただきました!
自分の知見を活かしながら、ALISのコミュニティ価値向上に向けて全力で取り組んでいきます!
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